美寿々（飯沼弘美)さん | 久留米絣織元　下川織物

久留米絣という名の未来を共有するインタビュー

２０２０年４月１９日

美寿々

飯沼弘美

久留米絣を知ったきっかけ(過去)

人生のルーツをたどる

久留米絣＝おばあちゃんの『もんぺ』

私の曾祖母は、絣の『もんぺ』を履いて、田んぼや畑仕事に行っていました。

古めかしい柄。野暮ったい膨らみのデザイン。分かりやすい表現だと『となりのトトロ』に出てくる、カンタのお婆ちゃんの服装。幼少期の私の久留米絣に対するイメージは、一言でいうと『ダサい』でした。

久留米絣との出会いは４年前。デニムのパンツしか履かなかった私に「このパンツ良さそうだよ」と主人が勧めてくれたのが、久留米絣でした。最初聞いたときは『え！？久留米絣？あの、おばあちゃんが履いていた、もんぺ？私が？』が率直な気持ち。だけど、お店で見たものは、曾祖母が履いていたものとはデザインも色も違う、オシャレなパンツでした。
いざ試着。『軽い！！涼しい！！このまま履いて帰りたい！！』とまさかの衝動買い。それが私と久留米絣を繋ぐ出会いでした。

久留米絣と私(現在)

生活やビジネスにおける関わり

久留米絣との出会いから数年経過したある日。『色々なデザインの留米絣の洋服が着たい』という思いを抱えていた私。縫製の仕事に３０年以上携わっている母が、勤めている職場を辞め、自宅で縫製（趣味程度）をしようかというタイミングが重なり、一緒に仕事をしてみないかと提案したのがキッカケでした。
下川織物さんへ生地の購入に伺い、工場見学。

約３０もの工程を経て出来上る久留米絣は、デザインから生地が出来上がるまでに、約3ヶ月を要するもの。一つ一つの工程に職人さんの情熱が感じられるものでした。また、拝見させて頂いた、久留米絣の色合いやデザインに興奮。

お洋服を販売する上で久留米絣の知識が薄いことへの不安から、久留米絣の産地、広川町が開催した『ひろかわ産地の学校』へ参加。久留米絣の製造工程や『絣』と呼ばれるところの括りの技術など、基本的な知識を一から学ばせていただきました。おかげで、お洋服を販売する際に、お客様に色柄だけではなく、生地のご提案も出来るようになりました。
久留米絣＝おばあちゃんの『もんぺ』のイメージから、性別・年齢問わず幅広い方に着て頂きたい。その想いから、母とお洋服を作り始めました。私自身、シャツ・パンツ・スカート・ワンピースと、久留米絣を愛用中。久留米絣を使ってわかる、機能性・快適性。

今なら曾祖母が毎日履いていた理由が分かる気がします。

自身の人生における絣の存在(未来)

久留米絣と寄り添って、これからを生きていく

『美寿々』ブランドをスタートして約１年２ケ月が経過しました。

いまだに『久留米絣＝高い』のイメージが強いなぁ…と、販売を通じて感じています。

お話を伺うと、久留米絣のお洋服を購入したことがある方の大半が『久留米絣＝お出かけ用の服』といわれます。また、現在販売されている既存の久留米絣のお洋服は年配の女性向けのモノが多いと感じているので、性別・年齢と問わず、多くの方に普段使いのお洋服として着て頂けるような、お洋服づくりを行っていきたいと思っています。

また、久留米絣を身近なものに感じて頂けるように、モノづくりに携わる職人さんや、久留米絣以外のモノとのコラボレーション商品の企画・製作を考えています。

長年『人とモノ』を繋ぐ、営業の仕事に携わってきましたが、長く受け継がれるものには、受け継がれる理由と、そのものがもつ良さがあると思っています。

日本の風土と、先人たちの暮らしの知恵から生まれた久留米絣を、もっと多くの方に知って欲しい。その想いを胸に、久留米絣と寄り添って、日々邁進していきたいと思っています。