久留米絣セミナー(国際下川絣未来賞)の開催
単なる広報活動としてのセミナー開催ではなく、未来に向けた取り組みとしたい。歴史的な文脈を踏まえて職人として日本の伝統工芸を世界に紹介するために。大きな展示会にブース出展するのではなく、欧州のトップレベルの美大・芸大で講演し なおかつ商談会、企業訪問などのビジネスもからめる。学生のみならずラグジュアリーブランド関係者、デザイナーなど社会人もオープン参加。
*フランス パリ ENSCI École nationale supérieure de création industrielle(国立高等工業デザイン学校)
開催に至った経緯
JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ)
新輸出大国コンソーシアム https://www.jetro.go.jp/consortium/
ハンズオン支援を受けて下川織物が企画立案・主催2020年2月初旬に行う。
会場は、パリのENSCI École nationale supérieure de création industrielle(国立高等工業デザイン学校)100人収容できる講義室をお借りし、満員御礼でのセミナーとなった。
*久留米絣を実際に手に触れていただく
*久留米絣の製造工程を2.5mの写真タペストリーで展示
*久留米絣は30工程を経て作られる
参加者に図案作成の機会を提案
参加された方々に久留米絣を紹介するだけでなく、今後も何か つながりができるようなプレゼンテーションをしたいと考えた。プロのデザイナー、デザイナーの卵(学生)が参加者の大半を占める中で考えたのは、「図案の募集」だった。
音楽の楽譜は、世界共通でありながら、それぞれの国の歴史や文化と混ざり合って多種多様な表現がなされており、現代でも進化し続けている。久留米絣の図案でも同じようなことができないかというアイデアが浮かび、ぜひセミナーの中で提案してみたいと思った。
コンペティションというよりは、「アワード」のほうが場所にふさわしいのではとの結論に至り「国際下川絣未来賞」と名付けた。
*久留米絣の図案と生地の対比で分かりやすいイメージを演出
*括り技法で久留米絣の糸ができるまでを展示
受賞作品の図案をもとに実際に久留米絣を制作
セミナーの中で久留米絣の製造工程を話し、図案の書き方のレクチャーをする。今回は「ヨコ絣」限定で募集した。「絣未来賞プロジェクト委員会」を立ち上げて、応募された図案を審査し、「未来賞」を決定。未来賞の図案をもとに実際に絣を制作。受賞記念品として受賞者に、12m進呈する。久留米絣はその製法の特性上、少量だけのサンプル試作ができない。受賞記念品としての12m以外にも300m以上分の絣糸を仕込む必要がある。そのため柄の権利は下川織物に帰属し、残った分の糸も無駄なく織り上げる。欧州ラグジュラリーブランド向けの商談会に この絣を出品することでビジネス的な成果も出す。
2020年秋ごろに商談会のために再びパリを訪れて、その際に授賞式を行う予定にしていたが、叶わず。オンラインで色々とコミュニケーションを図りながら、完成した受賞柄による新しい絣は、状況を踏まえて柔軟な対応で効果的なプレゼンテーションの機会を探り続ける。
2021年冬に受賞者とオンライン授与式を行い受賞者のもとに受賞記念品として、12mを届けた。
*受賞作品をもとに図案を制作
受賞者と制作過程を共有
日本の伝統的な織物である久留米絣は、手織りと動力織の2種類があり、絣動力織機による製法は世界中見渡しても他に類を見ない特殊な技術。職人とデザイナーがコミュニケーションを図りながら、モノづくりを行うことは双方にとって最高の満足感を得られる。その技術を公開し、図案の作成に関与できる機会を提供することは、世界中のクリエーター、デザイナーにとって興味深いことであると確信した。今後も継続的にこのような取り組みを行うためには、制作した生地を販売し経済的な循環を作り出すことも必要。そのため、今回制作した受賞柄の一部を下川織物オンラインショップで販売することにした。
*図案をもとに「括り(くくり)」を施した緯糸(よこいと)
*その後、染色
*糊、ワックスでコーティングして整える
*天日干しで機械的な圧力を加えないことで綿のやわらかい風合いを活かす
*経糸(たていと)は、3色に染め分けた
「国際下川絣未来賞」受賞柄の紹介
Double vibrations(ダブルバイブレーションズ)
日本語で「二重振動」と名付けられた柄のコンセプトは、タイトル通り「共鳴」たて糸を3配色作り、ヨコ糸は共通の配色にしている。経糸に弾かれて振動しているかのような緯糸の動き。
*バイオレット
*マスタード
*エメラルドグリーン
受賞者の紹介
Cécile Vignau(セシル・ビニャウ)
フランス人デザイナー。今回のセミナー会場でもあったENSCIでデザインを学び、フリーランスのデザイナーとして活動中。彼女自身のアートやデザインのテーマの中に「振動」「共鳴」といったモチーフが一貫して用いられているのを感じた。それを絣で表現してみたらどうなるのか。という試みは興味深いと感じた。また彼女自身が織物を実際にやるからこその強みで経糸や緯糸の配置、配色など含めて、しっかりしたコンセプトが素晴らしかった。柄そのものが斬新で未来的かという点では、プロジェクト委員会での審査会では意見が分かれる面もあったが、彼女のパッション「情熱」は今回のセミナー参加者の中では一番だったと感じた。実際に制作するにあたっては、制作過程を図案制作者と共有しコミュニケーションを図りながら作ることを前提に考えていたので、コミュニケーション能力という点も考慮させていただいた。彼女は、織物を学んでいるので、言語の壁を越えて「経糸と緯糸で対話」することができたことも受賞後の評価として優秀だったと感じます。
オンラインショップにて、販売中
https://kasuri-orimoto.com/?pid=166460295
久留米絣織元 下川織物
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